昨シーズンに続いて登場したエルメスコピーキャップ
21世紀の〈エルメス(HERMÈS)〉を知る読者にすれば金賞ではなかったことに物足りなさを感じるかも知れないけれど、それは地元フランスでなく、イギリスの革を使ったためだったといわれている。ティエリがイギリスのそれを採用したのは、単純にものとしてすぐれていたからである。

〈エルメス〉にはこの職人気質ともうひとつ、先見の明があっていまがある。この方面で八面六臂の活躍をしたのが三代目、エミール・エルメス。最たるものがモータリゼーションの到来を予感して切った大胆な舵だろう。鞄を皮切りにいち早く、しかしじっくりとファッションへそのフィールドを広げていき、今日の土台を整えた。そんな〈エルメス〉のコレクションで、ぜひ手に取ってもらいたいのが帽子だ。
昨シーズンに続いて登場したエルメスコピーキャップ「ネバダ」はウール素材のダブルフェイスで、バイカラーと後ろのメタルパーツ、鞍の鋲の意となるクルー・ド・セルがアクセントになっている。ラビットのカットフェルト素材を使ったハット「ピート」は広めのブリムにストライプのグログランが完璧な調和をみせる。